Kwさんは、本当に明るくて楽しいお元気なおじさんだったのです。
2017年秋に、うちの上の階に賃貸で引っ越して来られてから6年弱になります。
この2年弱は入院されていました。そのKwさんに昨日、不燃ゴミ捨ての時に偶然会いました。
団塊の世代 元気で明るいどこにもいないキャラのおじさん
Kwさんの素晴らしいところは、マンション内のどんな人にもフレンドリーに声掛けされること。
鋭い言葉だったり、ユーモアがあったりと「人が好きなんだなぁ」と思わせるタイプでした。
特にお気に入りだったのが、前管理人のTさんです。お歳も近かったのでした。
1階のエントランスでの2人のやり取りが面白くて、午前中遅くに必ず出会っていました。
私は遅い新聞・郵便物取りに行く時間でした。
Kwさんは、九州には珍しいくらいの桁違いの大金持ち。
IPO長者の方なんです。(ストックオプション長者=立ち上げた会社の上場時、株を売って長者に)
70歳を過ぎられてから、戸建てからマンション(賃貸)に移り住まれた感じです。
奥さんとは、別居したり、同居したり、とにかくお金はありますから、そのあたりは自由自在。
コロナ禍の最中2020年の真夏に奥さんが近くに別のマンションを借りて出て行かれました。
人生で初めて、あんなに自由を謳歌している老夫婦をマジマジと見学した感じです!
奥さんはパンツしか履かないスラっとした、ボーイッシュな感じで、いつもキャップをかぶってました。
スタイルは70代にしては、抜群にいいのです。若い頃、そこに惚れたのかなぁ、Kwさん。
ご夫婦とも、着ているものはデパートで買った感じのブランド物とはわからないけど、高級品とわかるものを身につけてありました。
奥さんの服は、2部屋分のクローゼットにも入りきらないほど、部屋がクローゼットだったそうです。
しかし、この奥さん、一切料理をしない方なんです。一切!!
コロナ禍以前は、ランチは美味しい外食店をグルリとお2人で食べ歩きされていました。
和・イタリアン・フレンチ・中華・鮨など、聞いたらどこも一流店ばかり。
包丁を握ることが、キッチンに立つことが、すでに無理な奥さんでした。
そして、ご主人は病気もあり、腰や肩を痛めているのに、レクサスを運転もし、重い物の買い物に付き合ってありました。
奥さんは、脳に2ミリの動脈瘤があるから、主治医から2Kgより重いものは持てないと言われたとか。
小さなバッグをちょこんと抱えた奥さんと、重い水の箱を運ぶ旦那さんの構図でした。
まるで、女王さまと奴隷。なんでここまで旦那さんが奉仕するのか?!
洗濯をするのも旦那さんのKwさん、干して畳んで、奥さんに文句を言われるとTさんに愚痴を。
奥さんの魅力がまるでわからないまま、奥さんは引っ越していなくなり、1人で生活してありました。
「日経を読んでいるんだね」がお別れの言葉・・・
2年前の夏に会って以来、昨日が多分お会いするのは最後になったかもしれません。
ずっと、血液の病気で入院、治療を受けられていたとのこと。
「10Kg以上痩せたよ、もう介護付きのマンションへ引っ越すから」
数日前から、そういえばガタガタ音がして、配送の車が出入りしてはいました。
まさか、Kwさんが退院されて、引っ越しをされるとはつゆ知らず。
コロナが収まっている今と思われたのでしょうか。
3食ついて、お元気な時は近くを散歩もできるような場所の介護付きマンションを選ばれたんでしょう。
あの懐かしいKw節を聞けなくなって2年近く、きっと帰って来られると思っていたのですが。
前管理人のTさんもいなくなり、マンションの1階はすごく寂しくなっていました。
コロナ禍になる直前の2019年の年末には、近くのお店でマンション内の8人とTさんで忘年会もしてくださったんでした。
あの頃の楽しかった思い出は忘れられません。Tさんもいて、Kwさんはワインをしこたま飲んでご機嫌。
あんなちょっと欧米人のノリを持った、日本人の70代のおじさんは普通はいません。
普通の日本人の70代のおじさんは、挨拶はしても声は出さない人が多いです。
余計な話しはしない方しか知りませんでしたから、ひと際存在感がありました。
とっても明るい性格の、楽しい方でした。英語も堪能で、ロザンゼルスにも以前住んでいたとか。
けれど、有り余るきっと数十億の資産があっても、人は病気に負ける時は負けるんですね。
でも、その財力で、普通の方は全くできない経験をたくさんされたいい人生だったのでしょう。
ただただ、どうしてあの奥さんを選択されたのかは、聞けずじまいでした。甚大な疑問でした!
昨日エレベーターに一緒に乗った時に、Kwさんは言いました。
「もう僕は長くはないんだよ。治療法がないんだからね」
「そんなことないですよ、肌も綺麗だし、歯もすごくお綺麗ですよ、大丈夫です!お元気になられてくださいね」と私は一生懸命言いました。
エレベーターの扉が閉まる時に、私が持っていた「日経新聞」を見て一言。
「日経を読んでいるんだね」
そこで、エレベーターの扉が閉まりました。私は一礼をして去りました。
最後まで、観察眼鋭く、明るい感じは失わず、軽く軽く最後の挨拶をして別れました。
お会いしたら軽く言葉をかわす程度の関りでしたが、とても印象に残る素敵なおじさんでした。
莫大なお金があると、人はあんなにもご機嫌でいられるのかとも感じました。
いつでもご機嫌の、フレンドリーな、明るいおじさんとの出会いと別れは今後も忘れられそうにありません。
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