聴いてみた、読んでみた
もう1年半年近く前になるだろうか、NHKの「あさイチ」にこの本の翻訳者のお1人、関 美和さんが出ておられた。
それから興味を持って、Amazonのオーディブルで聴いたのが初めてだった。男性の美しい朗読で聴いた。
まだ、朗読の声は耳に残っている。しかし、残念なことに、この本は図や表、グラフが多用されており、それが見られないままだった。
週末調理の間とか、散歩の時を利用してまず聴いた。それだけでも、わぁ、こんなことを書いた、なんと素晴らしい人が世界にはいるのだ!と思った。
そして、やはり1年ほどしてやっと(汗)、これは本を買う価値があると思った。手元に置いておきたくなった本。いつものAmazonで購入した。
もう、書評や読後感想などは出尽くしているだろう。あえて何も言う必要もないけど、ここ数年で心震え、涙が出た本はなかなかないから、書いている。
日本だけでも100万部売れているらしい。帯の言葉が納得なのだ。
「希望を持って生き抜くために身につけたい世界の教養」
リベラルアーツという言葉が虚しいほど聞かれなくなった昨今、教養を高めたくなっている、おばさん1人笑
高校までの教科書の教養で終わってしまっているから、後から学び、本を読まねば、どんどん何も知らない大人、おばあさんになってしまう。
世界はどんどんよくなっている
まず著者は世界の事実に関する13のクイズを出している。これに、どんな知識人でもチンパンジーに負けてしまう回答結果になったそうなのだ。
私はオーディブルで先に聴いていたせいか、本で読んだ時は13問中9問も正解できた。2回目はチンパンジーに勝てた笑
間違えたとともに驚いた質問は、まず4 世界の平均寿命が70歳ということ。日本は長寿国として知られているが、アフリカなどはもっとずっと短いと思っていた。
5 15歳未満の子供は、20億人、2100年には? 20億人と変わらないだろうこと(国連予測)→もっと増えると思っていた。
6 2100年にはいまより人口が40億人増える、その理由は? 大人(15歳から74歳)が増えるから→ 後期高齢者が増えると思っていた。
9 世界中の1歳児でなんらかの予防接種を受けている子供の割合は? 80%もの子供が予防接種を受けている→全く予防接種など受けられない子供が多いと思っていた。
後の質問には、2回目なので正解したが、正直驚いた事実も多かった。
新聞やテレビでのニュースなどで知る情報は、意外と一面だけが報道されていて、それが統計的な事実ではないこと。
そして、それが刷り込まれて、著者の言う10の事実判断の本能の元になっているだろうこと。
表紙の裏にあるこの図は特に印象的だった。現代の世界を、人口と、寿命、所得の3項目を見事に表している。
人口は圧倒的にアジアが多いのだ。そして、所得はアメリカおよび産油国。寿命は日本とシンガポールが最も高いところにある。
そして、インドでも寿命が70歳近いのだ。中国も75歳を超えている。
図以外の話になると、温暖化だけはするようだ。しかし、他の項目では「世界はどんどんよくなっている」という統計的な事実が示されている。
女性の教育も高等化しているし、中所得層が世界で最も多く、極度の貧困は過去20年で半分になった。
自然災害で亡くなるのは、過去100年で半分以下になった、いくらかでも電気が使える人は世界に80%もいるのだ。
この本を読まなかったら、世界は人口爆発し、災害も増えて亡くなる人が増え、予防接種も打てないまま亡くなる幼児も多く、、自然災害で亡くなる人は増え、世界的な寿命は50~60歳としか思えなかった。
悪くなるという刷り込みだけが耳に入り、よくなるなんて思えてなかった。
がしかし、反対なのだ!世界はどんどんよくなっている!!
「事実に基づいて世界を見られれば、人生の役に立つし、ストレスが減り、気分も軽くなってくる。」(著者の言)
希望を持って生きられるということ、それが逐一統計で示されている。
思い起こせば、人間は1950年代には月へ行き、今もアメリカを始め宇宙ステーションで作業も行われている。
乗り物だって、馬車から車、列車、飛行機へと早くなり、普通の人が世界中を旅行できるようになっている。
私が子どものころは、自分が飛行機に乗って、海外に行けるとは思えなかった。50数年前のことだ。
食事だって、粗食だった100年前から考えたら、今は飽食の時代、食糧は余っているのだろうか?
暑い、寒いを克服するためのエアコンの発明もすごいことだと思う。
悪いことばかりを見るのではなくて、もっと人間の能力の素晴らしいところを拡大して見ることも大事なのだ。
ハンス・ロスリングさんへの感謝と涙
今現在は、コロナウィルスのパンデミックに世界は覆われている。
オーディブルで聴き終えた時にもハンス氏の謝辞には涙が出たのだが、その後、彼がすでに亡くなっていたことを知って、さらに泣けてきた。
それも、この本を書き上げる作業の始めの頃に病気が発覚したとあった。
オーディブルでは、本の完成にあたり、お世話になった方々の名前がずらっと記されている。聴いていて、日本人の名前がないか耳を凝らしていたが、なかった。
本を買い、見てみたが、日本人は協力者にはいなかったと思われる。残念だった。
もし、今ハンス・ロスリング氏が生きておられたら、このコロナ禍をどのように受け止めて、どのような提言をしてくださっていたか?
そんな、どうしようもないことを考えてしまうくらい、氏の意見が聞きたかった。
「過大視本能」のところで、「結核と豚インフルエンザ」についてわずか1ページくらい感染症のことが書いてある。
「ワクチンがない豚インフルエンザが蔓延する可能性は捨てきれない。人類は大いに警戒すべきだ。」とは書いてある。
しかし、その後は結核という感染症の過小評価のことが書かれてあるだけだ。
彼の、このコロナ禍における意見を聞きたいのは私だけではないだろう。
本当に惜しい方が亡くなった。色々な国へ赴き、過酷な時を過ごされたりと、きっと過労もおありだったに違いない。
ハンス・ロスリング氏ほど、世界の人々を愛し、事実を伝えるために世界を奔走し、それをまとめ上げ世界に希望を与えた人を今まで知らない。
有り難うございましたとご遺族にお伝えしたい日本のおばさんでした。
まだお読みでない方は是非、本書を手に取っていただきたいと思うものです。
コメント